【2026年版】インフルエンザでの学級閉鎖「子の看護等休暇」新ルールと実務対応【そのまま使える申出様式あり】
2026年に入り、全国的にインフルエンザが猛威を振るっています。各地で学級閉鎖や学年閉鎖が報告される中、人事労務担当者の皆様のもとには「子供の学校が休みになったので休暇を取りたい」という相談が急増しているのではないでしょうか。
ここで注意が必要なのが、2025年(令和7年)4月1日から改正施行されている育児・介護休業法です。この改正により、子の看護等休暇の対象範囲や取得事由が大幅に拡大されました。法改正後、本格的な流行期を迎えるのは今シーズンが初めてとなります。「これまでの慣習」で対応してしまうと、法令違反のリスクや従業員とのトラブルに発展しかねません。本記事では、今すぐ確認すべき実務のポイントを解説します。
子の看護等休暇はどう変わった?
2025年4月施行の改正育児・介護休業法により、子の看護等休暇は大きく変わりました。
そもそも、子の看護等休暇は、共働き世帯の増加と少子化の深刻化する中で、子の看護等休暇をより取得しやすくすることで、子育てをしながら働く労働者が育児と仕事の両立を実現することが目的とされています。
名称の変更
これまでの子の看護休暇から子の看護等休暇へと名称が変更されました。
実は、この等という一文字が追加されたことには重要な意味があります。従来は看護という言葉から「子どもが病気のときだけ」というイメージが強かったのですが、今回の改正で行事参加や学級閉鎖への対応など、看護以外の目的でも取得できることが明確になりました。
対象となる子の範囲の拡大
改正前は小学校就学前まで、つまり保育園・幼稚園児が対象でしたが、改正後は小学校3年生修了までに拡大されました。
これにより、小学校1年生から3年生までの子を持つ労働者も、新たに制度の対象となります。実務上は、該当する子を養育する従業員の把握・制度周知と、休暇取得の管理方法の見直しが必要です。
取得事由の拡大
従来の「病気・けがの看護」「予防接種」「健康診断」に加えて、新たに以下の事由が追加されました。
感染症による学級閉鎖等
インフルエンザやその他の感染症により、学校・保育所・幼稚園等が臨時休業(学級閉鎖・学年閉鎖・休園等)となった場合が対象です。子ども本人が病気ではなくても取得できる点がポイントです。
もっとも、子の看護等休暇を取得した日に対する賃金を、支給するか支給しないかは企業内でのルールによります。
支給しないのであれば、従業員の給与額も減ってしまうため、本人も積極的に取得したいとは思わないでしょう。一方で企業側も、従業員が休むことで業務が滞ってしまうというジレンマを抱えています。
しかしながら、このような状況を踏まえ、テレワークが可能な職種であれば「学級閉鎖の日はテレワーク勤務で対応する」という選択肢を用意しておくことも有効です。子どもの様子を見ながら自宅で業務を進められれば、労働者は収入を確保でき、企業も業務の継続性を保つことができます。テレワーク環境の整備や運用ルールの策定を、あらかじめ検討しておくことをお勧めします。
学校行事への参加
入園式や卒園式、入学式といった、子どもの成長に関わる重要な行事への参加が認められました。
ただし、運動会や授業参観などすべての行事が対象ではないことに注意しましょう。従業員から「子どもの運動会に参加するので何らかの休暇は使用できないか?」といった相談が想定されます。
労使協定により除外できる労働者の見直し
改正により、労使協定で除外できる労働者の範囲が変更されました。
改正前は、労使協定を締結することにより、以下のような従業員は取得できないとすることが可能でした。
- 入社6か月未満の労働者
- 週の所定労働日数が2日以下の労働者
改正後は、入社6か月未満の除外規定が削除され、労使協定を締結している場合であっても週の所定労働日数が2日以下の労働者のみが除外可能となりました。つまり、入社直後の従業員であっても、要件を満たせば子の看護等休暇を取得できることになります。
取得を拒否すると企業名公表につながる?
もし、従業員からの正当な休暇申請を「うちはまだ準備ができていないから」と拒否し続けた場合、どのような事態が待っているのでしょうか。
まず、従業員からの相談や通報を受けた労働局が、企業に対して「報告の徴収」や「助言・指導」を行います。この段階では改善を促す穏やかな対応ですが、ここで真摯に対応しなければ、正式な「是正勧告」が出されます。さらにそれにも従わず、悪質と判断された場合、最終的に「企業名の公表」という極めて重い措置が取られます。
企業名が公表されると、厚生労働省や労働局のウェブサイトに社名が掲載され、誰でも閲覧できる状態になります。現在の採用市場において、これは罰金を支払うよりもはるかに大きなダメージです。SNSで瞬時に拡散され、優秀な人材が流出し、新卒・中途採用が困難になるなど、企業のブランドイメージは一気に失墜することとなります。
この改正への対応は、単なる事務作業ではなく、重要な「経営課題」として捉える必要があります。
学級閉鎖等への対応手順と就業規則の改定ポイント
改正法が施行されていますが、実際に規程を改定し、現場へ周知できている企業はまだ多くありません。
しかし、インフルエンザの流行期に突入した今、従業員からの申請が来てから慌てるのではなく、今からでも体制を整えましょう。
就業規則(育児・介護休業規程)の改定
2025年4月施行の改正育児・介護休業法に合わせて育児介護休業規程を改定していない場合、子の看護等休暇に関する条文で対象となる子は「就学前の子」という表現が残っていることがあります。法改正により「小学校3年生修了まで」となりましたので、育児介護休業規程の改定を行いましょう。
特に、インフルエンザ等の感染症による学級閉鎖に対応するため、取得事由に「感染症による学級閉鎖等」を追加することも必要です。
また、労使協定により除外できる労働者も変更されているため、併せて労使協定の見直しも行いましょう。
申請フローと証明書類のルール化
学級閉鎖の場合、どのような証明を求めるかを決めておきましょう。
もっとも、あまりに厳格な証明を求めると、取得を抑制しているとみなされるため、休暇を取得する労働者にとって過度な負担になるような手続きは避けましょう。
- 学校からの連絡メールの写し
- 学校ホームページのキャプチャ画像
- 自治体の発表資料
- 申出様式
有給か無給かの再確認
子の看護等休暇を取得した日や時間に対して、賃金を支払うべきかが問題となりますが、法律上「有給」にする義務はありません。
この点については、企業によって取り扱いが異なる部分ですので、就業規則などを再確認しましましょう。
また、無給とする場合は、控除の計算方法などを明確にし、従業員に説明しておく必要があります。
子の看護等休暇の取得でよくある質問
規程を整備しても、現場の管理職や人事担当者が正しく理解していなければ、法令違反のリスクは残ります。
実際に、改正法施行後「子どもは元気だから休暇は認められない」「当日の申し出は困る」といった誤った対応をしてしまい、トラブルになるケースが報告されています。
ここでは、特に間違いやすい3つのポイントを整理しました。
学級閉鎖になったけれど子どもが病気ではない場合でも取得をできる?
「うちの子はインフルエンザじゃない。元気だけど、学級閉鎖で学校には行けない。だから家で食事を作ったり、世話をしないといけない。でも病気じゃないから看護ではないよね?こんな場合でも休暇を取得できるの?」
このような疑問を持つ従業員は少なくありません。しかし、答えは明確です。取得できます。
今回の改正法では、感染症による学級閉鎖そのものが取得事由として明記されました。つまり、子ども本人が病気かどうかは関係ありません。学校側から登校を差し止められ、保護者が自宅で子どもの面倒を見なければならない状況であれば、それが取得事由に該当します。
従来の子の看護休暇という名称から、看護(病気の世話)というイメージが強く、現場の管理職が「元気なら留守番できるはず」と判断してしまうケースが報告されています。しかし、法律上、このような理由での拒否は認められません。制度の趣旨を正しく理解し、従業員へ周知を徹底しましょう。
「当日の朝に」急な申し出があったときは取得拒否できる?
業務の調整上、企業としては「前日までに申請してほしい」とルール化したいのが本音かもしれません。しかし、子の看護等休暇は子どもの急な発熱や突発的な学級閉鎖に対応するための権利です。
たとえ就業規則に「3日前までに申請すること」といった規定があっても、当日の電話連絡などによる申し出を認めないことは法的に許されません。口頭での申し出を有効とし、必要書類は後日提出してもらうといった、柔軟な運用体制を整えておくことが実務上のポイントです。
「中抜け」での取得を認めなければならない?
時間単位での取得が可能になったことで、「午前に2時間だけ抜け、昼に戻って、また夕方に1時間抜ける」といった中抜けの要望も想定されます。
ここで注意したいのは、法律で義務付けられているのは始業からまたは終業までの時間単位取得であり、勤務の途中で戻る中抜けまでを認めることまでは義務化されていないという点です。その一方で、政府の指針では中抜けを認めることが「望ましい」とされています。運用を複雑にしないためにも、自社でどこまで認めるかを明確にし、就業規則に落とし込んでおくことが混乱を防ぐ近道です。
まとめ
ここまで、2025年4月に施行された子の看護等休暇の法改正内容と、実務上の注意点を見てきました。
インフルエンザや流行性疾患による学級閉鎖は、今後も毎年のように発生します。今シーズンだけでなく、来年も再来年も同じ状況が繰り返されるでしょう。だからこそ、この機会に自社の就業規則と運用マニュアルが最新の状態になっているか、今一度確認しておくことをお勧めします。
なお、育児と仕事の両立支援制度を整備した企業は、厚生労働省の両立支援等助成金の対象となる場合があります。適切な規程整備と運用実績により、助成金を受給できる可能性がありますので、制度改定と併せて検討されることをお勧めします。
就業規則や育児介護休業規程の改定、具体的な運用ルール(証明書類の範囲など)、助成金申請のサポートについて不安がある場合は、お気軽に当事務所へご相談ください。貴社の実情に合わせた最適な規定案をご提案いたします。
本記事は2026年2月時点の法令・通達をもとに作成しています。
法改正や新たな通達により取り扱いが変更となる場合がありますので、実際の運用にあたっては最新の情報をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。





