令和8年度最低賃金引き上げ目安発表 | 業務改善助成金(最大600万円)で軽減する方法
令和8年7月28日、中央最低賃金審議会が今年度の最低賃金引き上げ額の目安を発表しました。三重県の最低賃金は現在の1,087円から1,143円への引き上げが見込まれており、例年どおり10月ごろからの発効が想定されています。
この引き上げに伴う人件費の負担は、最大600万円が支給される「業務改善助成金」を活用することで軽くできます。この記事では、三重県の最低賃金の見通しと、会社が今すぐ確認しておきたいポイントを解説します。
目次
1 令和8年度最低賃金引き上げの目安を発表
令和8年7月28日、国の会議(中央最低賃金審議会)で、今年の最低賃金をいくら上げるかの「目安」が発表されました。
最低賃金(地域別最低賃金)の目安額は、経済実態に応じて全都道府県がA・B・Cの3つのランクにグループ分けされています。 今回の目安は、以下の通りです。
出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(令和8年7月28日)
もし、全ての都道府県がこの目安どおりに引き上げると、全国加重平均は1,121円から1,176円になります。
なお、政府は「遅くとも30年代前半のできるだけ早期」に「全国平均1500円」に引き上げることを目標としています。
去年よりは少し落ち着いたペース
今年、注目したいのは引き上げのペースが少しゆるやかになったことです。
全国加重平均の上昇額は、令和6年度が51円(引き上げ率5.1%)、令和7年度が66円(同6.3%)、令和8年度の目安は55円(同4.9%)です。
去年までは5年連続で「過去最高」を更新する引き上げが続いていましたが、今年は額も率も去年より下がっています。 とはいえ、今年の目安額は過去2番目の引き上げ額であり、50円台の引き上げが続いていることに変わりはありません。
「毎年人件費が5%くらい上がっていく」という前提で、経営の計画を立てておく必要があります。
2 三重県の最低賃金はいくらになる?
目安どおりなら1,143円
三重県の今の最低賃金は、時給1,087円です(令和7年11月21日から)。
ここに、今回の目安である56円を足すと、
1,087円 + 56円 = 1,143円
これが目安どおりに引き上げた場合の金額です。
ただし、これはあくまで目安を当てはめただけの金額です。実際の金額は、この後開かれる三重県の審議会での話し合いを経て、三重労働局長が決めます。
注意したいのは「目安より上がる」可能性があることです。 最近は、目安を超えて引き上げる県が増えていて、令和7年度は39の道府県が目安を超えました。1,143円は「最低ライン」くらいに考えて、少し余裕をもって資金の準備をしておくと安心です。
発効日は「10月」とは限らない
ニュースでは「10月ごろに新しい金額が始まる」と伝えられることが多いのですが、去年の実績を見ると、必ずしもそうとは言えません。
令和7年度、三重県の最低賃金が新しくなったのは11月21日でした。これは、大幅な引き上げに伴う中小企業への負担軽減と準備期間の確保を目的に、発効日を先送りすることで労使間の合意が図られたためです。
全国的に見ても、10月中に発効したのは20都道府県にとどまり、27府県は11月以降、6県にいたっては令和8年1月以降という、かなり大きな後ろ倒しが起きていました。
ただし、令和8年度は新しい動きがあります。
令和8年6月23日、中央最低賃金審議会が「発効日を、大幅な引き上げ額を確保するための交渉材料にすべきではない」という方針を示しました。目安を大きく上回る引き上げをする場合や、発効日を後ろ倒しする場合は、地方の審議会にその理由をきちんと説明することが求められるようになっています。
つまり、今年は、去年のような大きな後ろ倒しが起きにくくなる可能性があるということです。
ただし、後ろ倒しそのものが禁止されたわけではありませんので、理由があれば今年も後ろ倒しが起きる可能性はあります。
三重県では、去年と同様に発効日を後ろ倒しする判断をするのか、それとも去年よりも発効が早まるのかは、現時点では分かりません。「10月」「11月」どちらのケースでも対応できるよう、両方を想定して準備しておくのが安全です。
正式な発効日は官報(国の公式なお知らせ)で決まります。9月ごろ、三重労働局からの発表を必ず確認してください。 最新情報を確認するには、三重労働局の公式サイトを確認するようにしましょう。
3 会社が今すぐ確認しておきたい3つのこと
毎年、引上げの目安額が公表されてから、10月に新しい最低賃金が適用されるまで、8月、9月の2か月ほど準備する時間があることになります。 2か月あれば、十分に準備できると思うかもしれません。
しかし、賃金額の改定の要否の検討、労働条件通知書や給与計算システムの変更や、労働者への周知、業務改善助成金の申請など対応しなければいけないことは意外と多くあります。 そうすると、思っているよりも時間がかかってしまい、あわてて対応することになりかねません。
そこで、ここからは、最低賃金に関して会社が最も重視すべき、確認方法をお伝えします。
給料の金額が最低賃金を下回っていないか確認する
最低賃金は、1時間あたりの賃金がいくらかで判断されます。 まずは、会社で働く人の給料が、最低賃金を下回っていないかを確認することが必要です。
パートタイマーやアルバイトのように時給で働いている労働者はわかりやすいですが、意外と見落としがちなのが月給で働いている正社員です。 月給で働いている労働者の場合、最低賃金は、以下の計算方法で月給を時給に計算し直して判定します。
1時間当たりの賃金 = 月給の金額(対象外の手当を除く)÷ 1か月の平均労働時間
例えば、月給18万円、1か月の平均労働時間が160時間の人がいたとします。この場合、1時間当たりの賃金に計算計算すると1,125円となります。
そうすると、もし最低賃金が1,143円となった場合、1時間当たりの賃金1,125円ですので、最低賃金を下回ってしまいます。
新卒の初任給や、短時間で働いている人は、特に注意して確認しましょう。
また、1時間当たりの賃金を計算する際にすべての手当を含めていいわけではない点にも注意が必要です。 最低賃金法では、計算に含められない手当が定められており、具体的には、以下のような手当は計算に含めることができません。
- 一時的に払う賃金(結婚のお祝い金など)
- 1か月より長い間隔で払う賃金(賞与など)
- 残業・休日出勤・深夜の割増賃金
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
「総支給額では最低賃金を超えている」、「手当も含めれば最低賃金を超えている」と思っていたら、実は計算に入れられない手当ばかりで、本当は下回っていた、というのはよくある失敗です。
なお、もし最低賃金を下回る賃金しか払っていない場合、最低賃金法違反により50万円以下の罰金が科されることがあります。当然、差額を払う義務も発生しますので、確実に最低賃金を下回らいないように確認しましょう。
給料の仕組み全体を見直す
最低賃金の引き上げは、時給で働くパートタイマーやアルバイトだけの問題ではありません。
毎年50円前後の引き上げが続くと、入社したばかりの新入社員と、何年も働いているベテラン社員の時給がほとんど同じになったり、場合によっては逆転したりする、いわゆる「賃金の逆転現象」が起こることがあります。
勤続年数や経験による賃金差が縮まると、既存社員のモチベーション低下や、優秀な人材の離職といった問題につながりかねません。
そこで、最低賃金の引き上げをきっかけに、次のような点も確認しておきましょう。
- 新人とベテランの時給が、逆転したり、差がほとんどなくなったりしていないか
- リーダーや主任などの役職手当は、時給の上昇に見合っているか
- 正社員の初任給と、パートタイマーの時給のバランスが崩れていないか
最低賃金を下回る人の時給を引き上げるだけで終わらせず、ベテラン社員や役職者とのバランスも見ながら、賃金制度全体を見直すことが大切です。
社会保険労務士などの専門家に相談しながら自社に合った制度を設計しておくと、人材の定着にもつながります。
賃上げの負担を軽くする制度を検討する
ここまで見てきたような、最低賃金への対応や賃金制度全体の見直しには、当然コストがかかります。
しかし、この負担を軽くする方法があります。
賃上げにあわせて生産性を上げるための設備投資を行うと、その費用の一部を国が助成してくれる業務改善助成金という制度です。助成される金額は、最大600万円にのぼります。
令和8年度は、申請の受付開始が9月1日からとなっており、早めに検討・準備しておくことが大切です。詳しくは、次の「4 賃上げの負担を軽くする『業務改善助成金』」でご紹介します。
「そもそも確認の仕方がわからない」という方へ
ここまで3つの準備をお伝えしましたが、「うちが最低賃金を守れているか、確認の仕方すらわからない」という方もいらっしゃるかと思います。
当事務所では、まず自社の給与が最低賃金を守れているかどうかの確認だけでもご相談いただけます。「毎年この時期になると不安になる」という方には、給与計算の代行や継続的な労務顧問契約もあわせてご案内できますので、まずはお気軽にご相談ください。
4 賃上げの負担を軽くする「業務改善助成金」
ここからは、最低賃金の引き上げにあわせて賃上げを行う場合に活用できる業務改善助成金についてご紹介します。
会社の中で一番低い時給(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げて、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行うと、その費用の一部を国が助成してくれる業務改善助成金という制度です。
最低賃金の引き上げにあわせた賃上げも、もちろん対象になります。 「上げなければいけない賃金」を、「使えば負担を軽くできる制度」に変える発想です。
どんな会社が対象になるか
対象になるのは、次の3つの条件を満たす中小企業・小規模事業者です。
- 資本金または常時雇用する労働者数が業種ごとの基準以下の中小企業・小規模事業者であること
- 事業場内最低賃金(会社の中で一番低い時給)を50円以上引き上げること
- 生産性向上に資する設備投資等を行うこと
令和8年度は、この事業場内最低賃金の要件から、去年まであった最低賃金と事業内最低賃金の差額が「50円以内」という上限が撤廃されました。したがって、現在の時給が最低賃金ぎりぎりという会社だけでなく、少し余裕がある会社でも対象になりやすくなっています。
なお、申請前6か月以内に解雇や賃金引き下げを行っている場合や、労働関係法令への重大な違反、労働保険料の滞納があるなど、一定の事情がある場合は助成金を受けることができません。
この他、助成金の申請に当たっては、詳細な取り決めがあります。自社が対象になるか判断に迷う場合は、助成金申請の専門家である社会保険労務士に確認しながら進めると安心です。
いくらもらえるか
では、生産性向上に資する設備投資等について、どのような助成金が受けられるかを見ていきましょう。
業務改善助成金では、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に対して、一定の割合で助成金が支給されます。 助成される金額は、助成率と上限額という2つの要素で決まります。
まず、助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金によって決まります。 1,050円未満なら5分の4、1,050円以上なら4分の3ということになります。
たとえば、三重県の最低賃金は1,087円と、すでに1,050円を超えています。 つまり、三重県では、事業場内最低賃金は自動的に1,050円以上となり、助成率は4分の3になるということです。
三重県以外で事業を行っている方は、ご自身の事業場内最低賃金が1,050円を超えているかどうか、まず現在(令和7年度)の最低賃金額をご確認ください。 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」から、都道府県ごとの金額が確認できます。
次に、上限額は、「コース(時給をいくら上げるか)」「何人分の時給を上げるか」に加えて、会社の規模によっても変わります。事業場規模が30人未満の会社は、引き上げ対象が1人・2〜3人という少人数のケースで、上限額が優遇されます。
たとえば、三重県内で従業員20人の会社が、パートタイマー3名の時給を引き上げるケースで考えてみましょう。
事業場規模30人未満・引き上げ対象2〜3人にあたるため、70円コースなら上限額は100万円(30人以上の会社なら50万円)です。この「70円コース・2〜3人」の組み合わせは、30人未満の会社とそれ以外の会社で上限額が2倍と、最も優遇差が大きいパターンです。
90円コースを選べば、上限額は240万円(30人以上の会社なら150万円)まで広がります。導入する設備の金額に応じて、どのコースを選ぶか検討することになります。
申請できる期間は「9月1日から」締め切りは地域ごとに違います
もうひとつ、令和8年度で大きく変わった点があります。
- 申請の受付開始:令和8年9月1日(去年までより遅くなりました)
- 申請の受付終了:「地域の最低賃金が新しくなる日の前日」または「令和8年11月30日」のどちらか早い方
つまり、新しい最低賃金が始まる日が早い地域ほど、業務改善助成金の準備できる時間が短くなるということです。
今年は「10月ごろから順次発効」が基本の見込みですが、2章で触れたとおり、地域によっては去年のように発効が後ろ倒しになる可能性も残っています。
この記事を書いているのは、令和8年7月末です。仮に発効日が10月1日だとすると、そこまで残り2か月ほどしかありません。
「9月1日の受付開始を待ってから準備を始める」のでは、正直かなり厳しいです。 どの設備を導入するか検討したり、見積もりを取ったりする準備には、ある程度の時間がかかります。申請の受付が始まる9月1日の時点で、すぐに申請できる状態になっているのが理想です。賃上げの計画や、設備投資の検討は、今のうちから動き出しておくことをおすすめします。
ここで特に注意したいのが、「引き上げ額」を先に決めておくことです。 三重県の例で見ると、令和7年度の最低賃金が官報で公示されたのは9月11日でした。正式決定を待ってから引き上げ額や導入する設備の検討を始めていては、9月1日の受付開始に準備が間に合わない可能性があります。
そこで、2章でお伝えした目安額(56円の引き上げで1,143円)をベースに、引き上げ額とコースを先に仮決めしておくことをおすすめします。ただし、目安を超えて引き上げる都道府県が増えている実情も踏まえると、目安ぴったりに合わせるのではなく、少し余裕を持たせた金額で計画しておくと安心です。
なお、予算がなくなり次第、申請期間の途中でも締め切られることがある点にもご注意ください。また、対象事業者の要件、申請できる期間、上限額、コースの区分は、必ず都道府県労働局が発表する最新の情報でご確認ください。
業務改善助成金を活用して設備導入、お手伝いします
当事務所では、業務改善助成金の申請から支給までを一貫してお手伝いしています。美容業のナノバブル発生システム、介護業の食洗機・見守りカメラ・福祉車両、飲食業の店舗改装、小売業のプリント&カットマシンなど、これまでご支援した業種・設備はさまざまです。
「うちの業種でも対象になるのか」「何に設備投資すればいいかわからない」「何人分、いくらもらえるのかわからない」という段階からのご相談も歓迎です。三重県内の事業者の方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
5 スケジュールを逆算して動きましょう
ここまで見てきたとおり、令和8年度の最低賃金は引き上げ額も発効日も、この記事の時点ではまだ確定していません。三重県の引き上げ額と発効日が正式に決まるのは、早くても8月中旬以降です。
とはいえ、「確定してから動く」のでは間に合わない可能性があります。給料の確認や制度の見直し、設備投資の検討には、思っている以上に時間がかかります。
また、 業務改善助成金の申請受付は正式な引き上げ額の発表を待たずに9月1日から始まりまってしまう可能性もあります。発効日が10月だとすると、そこまで残り2か月もない状況です。
特に、業務改善助成金は申請時に引き上げ額(コース)を決める必要があるため、正式決定を待たず、目安額(56円の引き上げで1,143円)をベースに、少し余裕を持たせた金額で先に仮決めしておくことが欠かせません(詳しくは4章)。
今分かっている情報をもとに、発効日から逆算してスケジュールを立てておきましょう。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 今すぐ〜8月末 | 給料が最低賃金を下回っていないか確認、引き上げによる影響額を試算、給料の仕組みの見直しを検討、目安額をもとに業務改善助成金の引き上げ額・コースを仮決め、生産性向上のための設備投資を検討・見積りを依頼する |
| 9月1日〜 | 業務改善助成金の申請受付が始まる(正式な引き上げ額の発表を待たずに動き出すのがおすすめ) |
| 9月ごろ | 三重県の引き上げ額と発効日が正式に決まる(官報で発表。三重労働局のサイトも要確認) |
| 発効日の前日まで | 労働条件通知書・給与計算システムの設定変更、労働者への周知を完了させ、業務改善助成金を申請する(受付は発効日の前日または11月30日のどちらか早い方まで) |
| 発効日 | 新しい最低賃金が適用される |
最低賃金の見直しは毎年のことですが、近年の引き上げ幅の大きさで、経営への影響は年々大きくなっています。「新しい金額が始まる直前になって、あわてて時給を上げる」という対応を繰り返していると、「賃金の逆転現象」のように会社全体での給料の仕組みはどんどん歪んでいってしまいます。
早めに現状を把握し、賃上げの負担は業務改善助成金でカバーしながら、給料の仕組み全体を見直す。それが、今年の最低賃金改定を乗り切る一番の近道です。
参考・出典
- 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(令和8年7月28日発表)
- 三重労働局「令和8年度三重県最低賃金(地域別最低賃金)の改正答申について」(令和8年8月5日発表)
- 愛知労働局「愛知県最低賃金の改正について」(令和8年8月5日発表)
- 岐阜労働局「岐阜県最低賃金を1,121円に」(令和8年8月5日発表)
- 中央最低賃金審議会「第3回目安制度の在り方に関する全員協議会」資料による発効日に関する考え方の整理(令和8年6月23日)
- 厚生労働省「業務改善助成金」掲載のリーフレット「令和8年度業務改善助成金のご案内」(令和8年4月作成)
- 三重労働局「三重県最低賃金の改正について」(令和7年9月11日発表)
この記事は、令和8年7月31日時点の情報をもとに作成しています。今後、都道府県それぞれの地方最低賃金審議会での話し合いによって、実際の引き上げ額や発効日が変わる可能性があります。最新の情報は、厚生労働省および各都道府県労働局の発表をご確認ください。
まずは無料相談から
当事務所では、最低賃金の引き上げにあわせた人件費のシミュレーション、就業規則の見直し、給料の仕組みの再設計に加えて、業務改善助成金の申請サポートまで、まとめてお手伝いしています。
業務改善助成金は、これまで美容・介護・飲食・小売など、さまざまな業種の申請をサポートしてきました。「賃上げの負担を、設備投資の助成金でどこまで軽くできるか」という視点でのご相談も承っています。
三重県内の事業者の方からのご相談をお待ちしています。お気軽にお問い合わせください。



